松浦旧記の中で最も歴史の事実を伝えていて重要視されているのはこの「大曲記」であり、松浦旧記の中では最も早い時期に書かれており、「深江記」「壷陽録」は大曲記を参考として書かれている部分もあります。
また平戸松浦藩の正史「家世伝」の作成時に数多くの記事が引用されており、記載内容の正確さが見て取れたのであろうと思われます。
著者の大曲藤内は「子孫共の覚のために」と書き記しており、他人に読ませるために書かれたものではなく家記として書かれたもので、歴史の真実をありのままに書くことが出来たのではないかと思われます。また「道可様御物語成られたる趣」とも書き記しており印山道可(隆信)から直接聞いたことが書かれている事も分かります。
大曲藤内の生まれは天文二十一年(1551)で寛永十七年(1640)12月15日。享年八十九才で亡くなっており、当時の戦国時代と時期を同じくしており、様子をずっと見てきたことになります。
また藤内は朝鮮の役にも従軍しています。
藤内が大曲記を記した年代は確定出来ていませんが、1600年前後かと思われます。
(澤 正明氏 松浦旧記の考察より抜粋)